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穂坂 綱一; 板倉 隆二; 横山 啓一; 山内 薫*; 横山 淳
no journal, ,
強レーザー場中の分子は親イオン生成に加え、競合する多くの解離性イオン化経路を持つ。われわれは光電子光イオン同時計測運動量画像観測法により、解離生成物ごとにイオン化直後の電子状態を観測し、その電子状態がレーザー波形に強く依存することを明らかにしてきた。本研究ではさらに、各解離生成物の放出運動量を分離した光電子画像を観測し、イオン化とその後の一価カチオンの解離ダイナミクスの相関を明らかにした。
佐藤 真一郎; 齋 均*; 今泉 充*; 島崎 一紀*; 近藤 道雄*; 大島 武
no journal, ,
荷電粒子線照射による水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)薄膜の光伝導度変化について調べた。プラズマ化学気相成長(PVCVD)法によりガラス基板上に製膜したa-Si:H薄膜(300nmt)に、10MeV陽子線を1.410/cm又は5.010/cm照射し、照射前後での光伝導度の温度依存性を測定した。すると、1.410/cm照射した試料では照射前よりも光伝導度が大きくしたものの、30から60Cの範囲の熱処理でこの上昇は急激に消失した。光伝導度の上昇が消失した後の温度特性は照射前のそれとほぼ同様の振る舞いを見せたことから、1.410/cmの照射量では実質的な放射線劣化は生じていないものと考えられる。一方、5.010/cm照射した試料では、光伝導度は照射前よりも大きく減少し、60C以上で明らかな照射劣化の熱回復が確認された。これより、a-Si:Hは60Cの熱処理で照射欠陥が回復することが明らかとなった。
森林 健悟
no journal, ,
これまで、X線自由電子レーザーによる生体分子損傷の研究において、生体分子を球体とし、レート方程式を用いてきたが、本研究では千個程度の原子の標的を非球体の物質として精度が高い計算手法であるモンテカルロ法で損傷を求め、球体の場合との比較から現状のモデルの欠点を把握する。特に、モンテカルロ法の適用が困難な大きな生体分子について、改良したモデルによるレート方程式計算を行う。現状のレート方程式のモデルでは、球の中心で光電子(X線吸収で発生する電子)が発生すると仮定するが、光電子が原子又はイオンと衝突電離を起こす回数は、光電子の発生場所から生体分子の外に飛び出すまでの距離の平均値()に比例することから、球体近似の場合に光電子の生体分子中の滞在距離がとなるように発生点を選ぶことにより計算精度の向上が期待できる。当日は、生体分子の損傷等と形状との関係も発表する予定である。
越智 義浩; 寺川 康太*; 末元 徹*; 河内 哲哉; 長谷川 登; 富田 卓朗*; 山本 稔*; 出来 真斗*; 大場 俊幸; 海堀 岳史
no journal, ,
プラズマ軟X線レーザー(波長13.9nm,パルス幅7ps)を光源とする固体表面観測用の干渉計の開発を行った。本装置により、光誘起相転移等に伴う初期擾乱の発生,伝播の様子を、シングルショット・ポンププローブにより、ピコ秒の時間分解能,ナノメートルの空間分解能(Z方向)での観測を目指す。講演では静的なサンプルを用いて行った装置性能評価試験の結果について報告する。
金子 耕士; 目時 直人; 竹内 徹也*; 松田 達磨; 芳賀 芳範; Thamizhavel, A.*; 摂待 力生*; 大貫 惇睦
no journal, ,
空間反転対称性を持たないBaNiSn型構造をとるCeCoGeは、同じ結晶構造を持つCeIrSi, CeRhSiと同様に、圧力下で超伝導を示す。超伝導は、反強磁性が消失する臨界圧力近傍で現れることから、磁性の詳細について興味が持たれる。常圧下では、無磁場で20K, 11K, 7Kにおいて磁気転移を示すことが報告されているが、その詳細は明らかではない。今回、CeCoGeの磁気相互作用の詳細及びこの多段転移の本質を明らかにする目的で、単結晶中性子回折実験を行った。冷却に伴い、まず20K以下で、1 0 1/3に磁気反射が現れることを見いだした。さらに低温の8Kでは、この1 0 1/3反射が消滅する一方、代わって1 0 1/4反射が現れる。そして5.3K以下では、1 0 1/4反射が消滅しないものの、急激に弱くなるのに対し、新たに1 0 1/2反射が現れることを明らかにした。この結果は、CeCoGeにおける多段転移が、軸方向についての反強磁性結合の周期の変化に対応していることを示している。講演では、各相の磁気構造モデル及び詳細な温度変化も含めて発表する。
池田 隆司; Boero, M.*; Huang, S.-F.*; 寺倉 清之*; 尾嶋 正治*; 尾崎 純一*; 宮田 清蔵*
no journal, ,
窒素をドープしたカーボンアロイ触媒が固体高分子形燃料電池の空気極における酸素分子還元反応の有力なPt代替触媒として注目を集めている。触媒活性のさらなる向上のためには、触媒活性点と反応機構のミクロな理解が必須である。本研究では、炭素材を端のあるグラフェンシートとして簡素化し、第一原理電子状態計算を基盤とした分子動力学計算により、グラフェンにおける触媒活性に寄与する窒素の配置、及び触媒活性点での酸素分子還元反応の反応機構を調べている。これまでに、窒素をグラフェンの特定の位置にドープすると金属がなくても触媒活性を示すことを見いだしている。われわれのシミュレーションによって示唆された触媒活性に寄与する窒素の配置は、放射光を用いた分光実験によって得られた結果と矛盾していない。本発表では、第一原理分子動力学に基づいた化学反応のシミュレーションによって得られたカーボンアロイ触媒の酸素還元反応過程を報告する。
坂井 徹; 奥西 巧一*; 岡本 清美*; 糸井 千岳*; 佐藤 正寛*
no journal, ,
三本鎖スピンチューブの磁化過程では、3分の1プラトーが生じることが理論的に予想されているが、ユニットセルを正三角形から二等辺三角形に歪ませる場合には、そのプラトーの形成メカニズムが交代する。数値対角化と密度行列繰り込み群及び新しい有効理論により、その3分の1プラトーの相図を導いた結果を報告する。
神戸 振作; 徳永 陽; 酒井 宏典; 中堂 博之; 松田 達磨; 安岡 弘志; 芳賀 芳範; 大貫 惇睦
no journal, ,
f電子系115化合物のNMR超微細相互作用は、その異方性や温度依存が通常のtransferred hyperfine couplingだけでは説明できない。そこでRKKY相互作用を考慮したモデルでそれらの起源について考察する。
柴田 猛順; 小倉 浩一; 小池 文博*
no journal, ,
ガドリニウム(原子4f5d6s,イオン4f5d6s)の対称電荷移行は、電荷移行する6s電子の内側に閉殻でない4f5d電子があるため共鳴,非共鳴の反応経路Gd(D)+Gd(D)Gd(D)+Gd(D)+0cm及びGd(D)+Gd(D)Gd(D)+ Gd(D)-2887cmがある。これまで、共鳴,非共鳴の反応が独立に進み、それぞれ統計重率に比例するとして計算してきたが、共鳴,非共鳴の状態間の移行がある。今回、各衝突係数で結合方程式により状態間の結合を考慮して衝突エネルギー100eVから100keVの領域で電荷移行断面積を計算した。その結果、断面積は6s電子の内側が閉殻で共鳴電荷移行のみの反応の場合に比べ少し小さいだけであり、共鳴,非共鳴の反応が独立に進むとして統計に従って配分した値よりずっと大きいことを示した。
齊藤 高志*; Lon, Y.*; 水牧 仁一朗*; 安居院 あかね; 島川 祐一*
no journal, ,
近年、Aサイト秩序型ペロブスカイト酸化物AA'3BOにおいて興味深い物性が数多く発見されている。今回は、A'サイトにMnを持つ化合物LaMnBO(B=V,Cr,Ti)について、その物性を報告する。これらはいずれも半導体的であり、反強磁性的な振る舞いを示す。また平面四配位構造を持つMnイオンの価数に関する軟X線吸収分光の結果も併せて報告する。
水牧 仁一朗*; 田口 宗孝*; 安居院 あかね; 河村 直己*; Tassel, C.*; 辻本 吉廣*; 陰山 洋*
no journal, ,
Fe酸化物としては非常に珍しい平面四配位をとるSrFeOは2次元構造を持つにもかかわらず、磁気秩序は3次元的であり、特異な電子配置をとる興味深い物質である。今回われわれはFeの3p1s発光を用いて、Feの電子状態を調べた。SrをCaに置換したCaFeOと比較し、Feの電子構造と局所対称性の相関と3次元磁気構造におけるFe-3d電子の役割を報告する。
安居院 あかね; 水牧 仁一朗*
no journal, ,
イルメナトファミリーとして知られるMTiO(M=Mn, Fe, Co, Ni)について、O1s軟X線発光スペクトルを測定した。Mイオンの変化に対応したスペクトル形状の変化が観測された。この変化の様子をO2pとM3dの混成の強さの違いと合わせて議論する。
前川 雅樹; 薮内 敦; 河裾 厚男
no journal, ,
陽電子マイクロビームによる応力腐食割れ(SCC)亀裂の先端部観察において、亀裂の進展と空孔との関連をより詳細に調べるための方法として、応力印加下にあるステンレス薄膜に継続的にSCCを発生させ、その場測定が可能な測定法を開発した。これにより亀裂の進展中における空孔分布観察を行った。ステンレスの薄膜試料(SUS304,熱鋭敏化処理済み,厚さ20ミクロン)を挟み込んで取り付け、継続的に100MPa以上の引っ張り応力を印加し、塩化マグネシウム溶液を用いた腐食環境下に24時間暴露させるとSCCによる亀裂が発生することを確認した。亀裂近傍における空孔型欠陥の発生状況を陽電子マイクロビームにより調べたところ、亀裂先端近傍でのSパラメータ上昇が観測された。これは亀裂の発生に伴って空孔型欠陥が導入されたことを示唆している。さらに腐食環境に暴露し亀裂を進展させていくと、Sパラメータ上昇部位に沿って亀裂が進展していくような結果が得られた。
岩田 圭弘; 伊藤 主税; 原野 英樹*; 青山 卓史
no journal, ,
レーザ共鳴イオン化質量分析法(RIMS)による高速炉タグガス分析について、「もんじゅ」の破損燃料位置検出システム(FFDL)で要求されるpptレベルのKr検出感度を向上させるため、Arに由来するバックグラウンドの低減方策を検討した。主な課題はレーザ光の散乱に由来する光電子によるイオン化で生じるAr二量体イオン()のへの干渉である。Ar由来の非共鳴イオンの抑制を目的として、生成イオンを検出器に引き出す電極に対して、(1)スリット型電極孔の採用,(2)ポリカーボネート絶縁体板を用いた電極カバーの2点を考案した。前者はKr共鳴イオンが生成されるレーザ光路に沿ったスリット型の電極孔形状によりS/N比を改善する手法であり、従来の電極との比較測定によりの信号が約1/3に低減し、検出限界に対応する信号のゆらぎを解析系の回路ノイズ程度まで軽減できた。今後は絶縁体による電極カバーの効果測定に加えて、回路系のノイズ低減策を検討し、高速炉FFDL技術の高度化を目指す。
茂筑 高士*; 畑 慶明*; 土屋 佳則*; 井川 直樹; 星川 晃範*; 石垣 徹*; 安岡 宏*; 平田 和人*
no journal, ,
近年、Feを基軸とするニクタイド系における超伝導や平面四配位を持つ新しいFe酸化物が報告され、Feの周りの配位と物性との関連に関心が集まっている。本系における超伝導と磁性の発現もFeの周りの酸素配位に大いに依存している。本研究では、FeSrYCu O系における酸素配列を中性子回折法によって解析した。基本構造そのものは通常の固相反応法で合成可能であるが、還元アニールによりCuとFeの配列を秩序化させた。還元アニール後の構造は、アニール温度が700C付近の場合は元の構造に対してaa2cなる単位胞を持つ超構造(斜方晶)で、それ以外では元の正方晶のままであった。これはFeの周りの酸素が四面体配位を取り、このFeO四面体が規則的に配列しているか、していないかの違いによる。さらに還元アニール後酸化アニールを施すと、CuとFeの秩序配列はそのままに酸素のみが供給され、Feのまわりの酸素は八面体配位となった。
坂口 佳史; 吉良 弘; 奥 隆之; 鈴木 淳市; 中村 充孝; 新井 正敏; 遠藤 康夫; 加倉井 和久; 武田 全康; 脇本 秀一; et al.
no journal, ,
偏極中性子散乱実験は物質の磁気構造を明らかにするうえで極めて有効な手段である。JRR-3においても偏極中性子散乱実験はこれまで盛んに行われてきているが、100meV以上の高エネルギーの中性子の偏極については対応しきれず、これを可能にするHeスピンフィルターの適応が待ち望まれていた。一方、強力なパルス中性子線源を有するJ-PARCでは、高エネルギー領域を含む広いエネルギー領域の中性子を一度に偏極させることが望まれる。このとき、Heスピンフィルターを用いればこれが可能となる。また、セルを大型化すれば、大きい立体角での検極が可能となるという利点がある。以上のような観点から、われわれは、開発中のHeスピンフィルター(講演番号27pYK-8, 9)を実際の偏極中性子散乱実験に適応させるテスト実験を計画中である。本講演では、その計画と準備の詳細について報告する。
武田 全康; 鈴木 淳市; 山口 大輔; 秋屋 貴博*; 加藤 宏朗*; 宇根 康裕*; 佐川 眞人*
no journal, ,
高温での使用において、現状では添加が必要不可欠な希少金属Dyの使用量を著しく下げた、さらにはDyフリーのNd-Fe-B焼結磁石で高保磁力を実現する鍵を握る、主相の結晶粒の大きさと保磁力、また、界面ナノ構造と保磁力との間の定量的な相関に注目し、中性子小角散乱法を用いて調べてきた。この講演では、結晶粒径と焼結条件の違いによる保磁力と中性子小角散乱パターンの変化について報告する。中性子小角散乱測定は日本原子力研究開発機構の研究用原子炉(JRR-3)に設置されている中性子小角散乱装置SANS-J-IIで行った。また、異なる結晶粒径の原料粉に対し、焼結温度を変化させることで、保磁力の値を変えた数種類の試料を測定に用いた。保磁力は、結晶粒径と焼結温度によって変化し、それに伴って、中性子小角散乱パターンも敏感に変化することがわかった。また2次元検出器上の小角散乱パターンは異方的であり、主相を構成する結晶粒も異方的な構造を持ち、焼結温度によってその異方性の度合いが変化することもわかった。講演では、実験の詳細とその解析結果による、内部平均構造と保磁力の相関について報告する。
目時 直人; 金子 耕士; 酒井 宏典; 芳賀 芳範
no journal, ,
ウランカルコゲナイドUSは高温で半金属的、100K以下で非磁性-絶縁体的な電気抵抗の温度依存性を示す少数キャリア物質である。この物質に10テスラ程度の磁場をかけると、電気抵抗が6桁程度減少する巨大磁気抵抗効果を示すことが知られている。磁場によって5f電子の性格がどのように変化するか調べる目的でUSの磁場中中性子散乱実験を行った。実験の結果、4Kでは明瞭な結晶場励起が約7meVの励起エネルギーに観察され、図に示すようにほとんど変化しないことが明らかになった。局在性を仮定した結晶場ハミルトニアンの解析によっても、結晶場ピークについては大きな変化は期待できない。今回の実験結果は、十分低温では10テスラ程度の磁場をかけてもこの物質の5f電子は局在的性格を保ち続けることがわかった。
黒江 晴彦*; 浜崎 智幸*; 長谷 正司*; 金子 耕士; 目時 直人; 松田 雅昌; 加倉井 和久; 岡 邦彦*; 伊藤 利充*; 永崎 洋*
no journal, ,
低次元反強磁性体物質CuMoOの中性子非弾性散乱の結果を報告する。この系の磁気励起分散関係は、交換相互作用J3による孤立ダイマーによるフラットな分散関係(Et=J3=5.8meV,図中の点線)と、鎖間相互作用を考慮した擬一次元磁性鎖の分散関係との間に、波数に依存した相互作用を働かせることで再現できる。当日は、磁気励起の分散関係のほかに、低エネルギー励起の詳細を紹介する。
山崎 大; 武田 全康; 曽山 和彦; 丸山 龍治; 平野 辰巳*
no journal, ,
偏極中性子反射法は、表面・界面内の磁化ベクトル分布を解析できる手法であり、磁気多層膜の構造解析に主要な役割を果たしてきた。層状の磁気構造はもちろんのこと、最近ではパターンドメディアなど面内の磁気構造解析にも使われておりその重要性はさらに高まっている。また、同位体コントラストを利用してソフトマター,生体膜などの構造解析にとっても重要な手法であり、J-PARCでは既に自由界面,ソフトマターを主対象とした大学共同利用の試料水平型中性子反射率計が設置された。J-PARCでは、続いて一般共用を目的とした表面・界面測定用の偏極中性子反射率計の開発を進めている。本装置は、磁気多層膜をはじめとして、固体,ソフトマター,液体まで含んだ幅広い領域の表面・界面に対応できるよう、高い汎用性を持つ。鏡面反射率による表面・界面の深さ方向の構造解析に加え、非鏡面散乱,斜入射回折により面内方向の構造解析も可能である。本講演では、J-PARC偏極中性子反射率計の概念設計,装置シミュレーションの現状,今後の建設計画などを報告する。